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存在の思考へ

いや、本を買いも買ったり・・だが、まだ追いつかない。しかし研究というのは本代がかかるものである。私は、昨年度の研究費の残りがだいぶあるので、それを活用する予定だが。ここ数年哲学の本はあまり買っていないので、基本的なアイテムが欠けているのである。

日常の雑事、つまり肉体を維持するためにやらねばならないことはたくさんあるので、その合間を縫って「存在の根源とは何か?」と考え続けるということは、これはこの上なく「贅沢」な行為であることはたしかである。

最近はすっかり哲学にはまっている。最近の日本の哲学者にはけっこういい人もいる。よく、哲学史の研究ばかりで、自分で考えることをしないという批判がなされるが、ちゃんと自分で根源から考えようという人も近頃、多少はいるらしい。たとえば斎藤慶典なんかはなかなかいい。哲学を大学で勉強しようという人は、慶応の哲学科もいいかもしれない。

新田義弘ほかの論文集『媒介性の現象学』という本を読んでいるが、「むずかしいがおもしろい」という本である。存在の原基的な場面に迫っていく。思えば、二十数年前にこういう哲学的思考が日本にあれば・・と思う。少なくとも修士の頃に触れていれば、それほど迷わなくてもすんだと思う。だがこういう思考の地平が切り開かれてきたのも新田の業績に負うところが多いので、そこからついに仏教哲学、西田哲学との本格的な対話が始まりつつあるというスリリングな瞬間が近づいているのだ。私が求めていた哲学的思考がようやく最近になって開始されつつあったのである。私の学生時代はまだ「マルクスかウェーバーか」なんて時代で(いまや誰も知らない問題設定だが)、そのあとは「ニューアカ」とよばれる、ポストモダン思想のやや浅薄な(と、今では思うが)流行であった。こういう思想は、結局、後期フッサールが突入していた新しい思考次元を理解できないでいたのだ。つまり、「存在への問い」がそこにあることを忘却した。その頃にはやっていた廣松渉も今ではほとんど影響力を失っている。なぜか? といえば、要するにそれは、「言語の分節でカオスがコスモスになるんでしょ」という、丸山圭三郎的なパラダイムを出られなかったからだ(その発想は井筒俊彦にもあるのだが)。そこで、より根源的な、先言語的な存在の地平が見失われていた。中沢新一の思想的な行き詰まり(とはっきり言うが)も、根本はそこにある。もちろん「カオスというもの」があるわけではない。そう呼んでわかった気になるのが「山口昌男-丸山圭三郎」的な思考なのだ。ではそこに何があるのか? という、そこまで思考を進めねばならないのだが。結局、80年代にはそういう問いはほとんど見られなかったのだ。しかしそこで細々と(?)現象学の歩みが続いていたわけである。今になって初めて、たとえばデリダが何をやろうとしたのかが明確になってくる。これまでは、フーコー的な問題にひきつけて理解されてきたのではないだろうか?

と、こんなことを書いても受けるのはごく限られた人であろうから適当なところでやめておく。しかし日本の現象学思考のレベルは世界的にみても非常に高い、と私は思う。

しかしそれは、永遠の哲学とか、あるいはトランスパーソナル思想・心理学などとどう交差するのであろうか。その問いはまだどこにも存在しないだろう。霊的体験のある哲学者など全くいないのだからそれはしかたがない・・とは言っても、本来、仏教思想というものはそういうものであったし、西田幾多郎も、入り口付近ではあるがその世界をある程度見た上でやっている、という例もある。ウィルバーは、一般的には、時代錯誤の形而上学だと見られている。それは彼の理論構成が、きわめてヘーゲル的な体系になっているように見えるからだが、よく見ると、それなりに「場所的思考」をしようとはしている部分もある。私としては、ことさらにウィルバー批判というようなアプローチで行くことはしない。批判というのは、力を持っているものに対して行うものだ。

現象学における「存在地平」への思考の流れで、私が特に注目するのは、唯識で言う「種子」の概念にどこまで迫れるか、ということだ。これは脳に局在しない記憶ということでもある。種子がとらえられれば、私たちの中核にある「個体性の核心」、つまり魂なるものに迫ることができるだろう。私は、21世紀の思想の方向がそこに見いだせそうな気がする。

それにしても最近の学生はどういう思想書を読んでいるのだろうか。もちろんうちの学生はそんな本を読むわけはないが、東大の文科学生なんかはどういう本を読んでるんでしょうかねえ。全然見当もつかない。

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