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補完代替医療

いま、このコラムを書いていたら、書いているものが一瞬にして消えてしまうトラブルがあった。ある翻訳書の訳のひどさについて実名入りで糾弾する文章を書いていたのだが、「そういうことはやめておけ」という「上」からのお達しがあったもようなので、やめておくことにする。このココログの記事作成は、エスケープキー一発で全部消滅するのである。おそろしや・・

上野圭一の『補完代替医療入門』を読んだ。上野氏のホリスティック医学本はだいたいにおいて信頼に足るものであり、オピニオンリーダーとしての役割を十分果たしていると言えよう。おもしろかったのは、キリスト教神学者として有名な滝沢克己氏が「浄霊」を受けて眼病を治したことがあった、という話。

この本でも、補完代替医療(これをCAMと略する。Complementary and Alternative Medicineである)について、その身体観が「エネルギー身体」というパラダイムであることが強調されている。まさにこれが、ヒーリングの問題の中核であろう。しかし、身体がエネルギー場であるということは、すなわち、宇宙もまた全体がエネルギー場であるということを意味しているわけである。

新田義弘やミシェル・アンリなどによって、「どうしても還元できない根源的なものは〈生命〉である」という思想が語られているが、その生命を「エネルギー」として、またそれが「場」をなすものとして展開していくということに着目すれば、それは「からだ」の問題を包括することになり、霊性と身体との関係が浮かび上がってくる。これは抽象理論ではなく、この上なく具体的なこと、つまり「今ここに生きていること」に関わるものとなる。

これまでの霊性の議論は、ウィルバーのものなど見ても、補完代替医療などとの問題とどう接してくるのがあまりよく見えなかったのではないだろうか。シュタイナーでいうエーテル的なもの、アストラル的なものというのが、あまりに「意識」というコンテキストでとらえられ、「通常の自我よりも発達した次元」としてのみ理解されてしまうと、そうした諸次元は実は私たちの「からだ」の深層にあるのだ、という明白な事実が見えなくなってしまうのではないか? こういう深層身体論的なものは、ユングにもあまりないので、もっとみんなミンデルを読むといい、と思っている。『ドリームボディー』『プロセス指向心理学』『24時間の明晰夢』、もし読んでいなければすぐに買うべし! ひろくいってトランスパーソナル心理学といわれるものでは、ミンデルがいちばんおもしろい(ただ、限界もある)。また東洋人には理解しやすいパラダイムだと思う。

斎藤孝とか、あるいは古武術の甲野善紀とかがはやってきているのは、それだけの欲求があるからでもある。時代は「深層身体の文化」へ、という流れはもう確定しているのである。私も日々、そうした「現場」にいるのであって、決して話だけで知っている世界ではない。その意味で、思想は「臨床の知」でなければならぬ、と思っている。そういうわけで、「深層身体論」と宇宙論とのかかわり、といったテーマで書くことになるかもしれない。これはもちろん、前作で描いた「エネルギー場の重畳としての宇宙」という基本的な枠組に沿うものであるのだが。

このことは、「微細なもの」への感性に裏付けられ、そこに立っているものでなくてはならない。そうでなければ、人に訴えるものとはならないだろう。

また、上野氏も指摘するように、今の日本の医療制度は、その補完代替医療への取り組みにおいて最も遅れている部類に属する。こうした近代医学一元主義は、自分の身体を癒す能力が自分にあるということを見えにくくするし、また近代科学至上主義にもつながる、「イデオロギー的意味」を帯びているということもいえる。日本において、あたかも科学的唯物主義が「公認イデオロギー」のようになっているのは、つまるところ、この医療制度における制約が大きな影響をもっている。上野氏は、日本には宗教の多元主義はあるが、医療、つまり身体観(これは密接につながっているのだ)の多元主義がない、と指摘している。

つまり、癒し、ヒーリングの問題というのは、霊性を現実生活の中で活用しようという時、きわめて中心的なポイントである。近代科学は「霊性の組織的な否定」である(これはヒューストン・スミスの言)。なんとか、霊性ということを言わないよう言わないようにしてやっていこう、という方向性なのだが、これがそのまま実際の人間生活に応用されるとどういうことになるのか?――それが、いまの医療制度の問題として現れてくるのだ。

したがって、霊性を語ることは、単に「きれいごと」を語るだけではなく、時には、きわめて政治的な問題、つまり社会制度の変革という課題とつながっていることが明らかだろう。医療、身体観は、それが如実に出てくる場所なのである。

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