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身体技法三昧

本物の温泉が少ないという話だったが、それを求めて出かけてきた。秋山郷と燕温泉である。特に燕温泉はお湯の質はひじょうにいい。標高も高いところなので、避暑にもよい。これが家から1時間40分で着くのであるからすごい。妙高山の中腹である。

その他には、相変わらず身体技法三昧である。矢山式小周天もやっている。もっとも小周天そのものは前からやっているが、矢山式の特徴は手で気を導くということと、背骨を調整する基本功が充実しているということだ。高岡英夫はゆすってゆるめなさいというのだが、どうもそれがけっこうかんたんではない。ゆるめるための効果的な技法というのが必要なのだ。もちろん小周天の次の段階として、よりスピリチュアルな領域に関わることも出てくるが、それは中心軸の感覚が明確になっていくことの延長線上に理解されてくるのだ。これは私の経験からはっきり言えることである。天地に伸びていけば、その方向へ意識を拡大していけばよいとわかってくるのだ。それがある程度まで行けば、今までに経験したことのない質のエネルギーとコンタクトすることがある。

もっとも、矢山式の準備功や基本功そのものでなくても、他の気功法とかヨーガでも、ともかく背骨のゆがみを取るような方法なら何でもいいということはもちろんである。矢山式では五禽戯からもいくつか採用されているようだ。そのへんは各人のレパートリーからアレンジしてもよかろうと思う。

最近見た身体技法の本では、鴻上尚史『発声と身体のレッスン』は非常によい本だった。「声」を含めて身体を作っていくことに関しては第一級であろう。俳優の基礎トレーニングとして作られたものであるが、私のように人前で話をする商売全般に有益だと思う。教師というものは自分が「パフォーマー」であるという意識を持たねばいかんと思う。話の内容さえよければ自ずから通ず、という精神論では限界がある。また同じ鴻上の『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』という文庫本は、題名からすると軟弱なエッセイのようにも見えるが、どうして、感情・声・身体について、技法を通じて自分を豊かにする方法を書いている良書である。それから竹内敏晴の名前はあげるまでもないだろうが、『教師のためのからだとことば考』もたいへん共感しながら読んだ。これは教育の現状の痛烈なる批判である。しかし、身体性を欠落させた文化は教育界だけではなくもっと広範囲に及んでいるだろう。それには現代資本主義と記号的な思考との関連ということを探っていく必要があろうが・・そうなるとボードリヤールか? このへんは学生のころ少し勉強はしたが専門ではないので・・つまり現代人は「記号化された欲望」を消費している、そうした消費社会になっているというようなことだ。

『健身気功・易筋経』というのは「中国国家体育総局健身気功管理センター」なるものの編集した「公式テキスト」の翻訳である。つまり伝統気功とはいろいろなバリエーションがあるのだが、それをみな否定するわけではないが、ともかくも国で一つのスタンダードを作ってしまおうという企画である。それで易筋経・八段錦・六字訣・五禽戯という代表的な四大伝統気功が採択された。それが「健身気功」である。前に紹介したDVDつきのばか高い本もこの国家制定バージョンの功法を紹介したものであろう。ま、こういうのは太極拳の制定拳と一緒で、普及のためにはスタンダードを作って、指導員をどんどん作っていくシステムにするのが効率的だ。それは齋藤孝がいう「型」ということでもある。型にしなければ伝えられないし、特に教育に取り入れていくということではどうしても標準化は必要である。

ま、はっきり言えばその裏には、「法輪功」への対抗意識が見え隠れする。気功への興味がああいう方向へ行ってしまわないようにコントロールしたいというのがあるのだ。そういう意味で、中国の国家意識、中央集権的体質を感じるところもないわけではない。しかしひるがえってみれば、日本の政府、文科省の官僚には気功のキの字もないわけだし、厚労省も西洋医学の医者の利益を脅かすような代替医療への肩入れはありえないし(何せ医者出身の人が大臣になっているからそれはとうぶん変わりそうもない・・医学界からの政治献金は半端じゃない額である)、それを考えれば中国が「気の文化」を国家規模でとりあげ、それを整備していこうとすることは評価すべき点も多い。伝統気功も簡化太極拳並みに国際的に普及していくとしたら結構なことだと思う。反対に、身体文化を衰弱させ、記号的知性のみに偏った人間が多量に生まれている日本は、徐々に文明としての衰亡期に向かっていくことが予想される・・というか、すでにもうその時期に入っていると思うが。

というわけだが、さて国家制定バージョンの易筋経は・・? というと、この前の少林寺バージョンとくらべて、いくぶんか違っている。全体としては、きつい動きが少なくなり、マイルドになっている。このテキストには、意識すべきツボとか、どの経絡に作用するのかという情報がたくさん書いてあって有益。少林寺バージョンを知っているので、写真と説明だけでもおおよその動きはつかめた。全体を通してやってみると、かなりよかった。易筋経はかなりストレッチの要素があるが、経絡刺激とストレッチが巧みに融合されている感じだった。少林寺にない要素もつけ加わっている。これから私のレパートリーにしていこうと思った。というわけで、「健身気功ってかなりいけるのではないか?」ということで、八段錦と六字訣のテキストも注文することにした(五禽戯は近日発売)。八段錦はこのところお気に入りの功法として毎日やっているのだが、健身気功バージョンはどんなものか興味がある。すでに津村喬と楊名時のバージョンは知っているのだが、いまのところ私はその二つを好みに応じてミックスしてやっている。八段錦がおもしろくなってきたのも、ストレッチと気との微妙な関係を理解してきたからである。つまりストレッチによる経絡刺激を実際によく感じるということでもある。これにより太極拳のレベルも一段上がったような感じである。


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