伊泉龍一『タロット大全』レビュー
このまえの「タロット本」の項目との関連だが、『タロット大全』のレビューをアマゾンに投稿した。
★★★★☆ 「美しい幻影」としてのタロット?, 2004/10/31
レビュアー: カスタマー 新潟県 Japan
いわばタロットの「全史」の試み、その情報量の多さにはすごいものがある。
著者は最初に、タロットへの今の日本での関心が、いわば精神世界系とそうではないものとに分けられると言っている。著者の意図は、初めはただの美しいプレイングカードにすぎなかったものが、精神世界的意味を付与されていく歴史を「壮大なる幻想のドラマ」として描き出そうというところにあるようにみえる。そして、ゴールデンドーンのオカルティズムから、現代アメリカに至って、ニューエイジ的な自己探求のツールとして深層心理的な解釈が全盛となっている状況までをあとづけていく。こういった大まかな流れが日本語で書かれたのは初めてのことだ。
この本は、とてもオカルトに興味を持っているようだが、実はオカルト、あるいはサイキックな現象などをまったく信じていない人によって書かれているなあ、と思える。その外側に立って美しい幻影の数々を見て楽しんでいるというスタンスである。タロットに高度な精神的意味を求める姿勢をどこかで相対化しようとする意図を感じる。タロットの「神秘」を本気で信じていない人が「タロットに神秘を感じた人々の歴史」を書いた、そんな感じの本である。どうも、現代アメリカで主流になっていて、日本でも広まってきている「精神世界系タロット」に対して距離を取りたいという意図が見え隠れするように思う。もしかすると著者こそ、もっとも手ごわい反オカルティストかもしれない。
著者は学者ではないが学者的な本である。参考文献としての価値は大きい。タロットについての知識を得るには必須の文献である。ただ、「今ここで出ている一枚のカードに何を読み取るか」ということだけにフォーカスしようとするタイプの人には、こうした情報や知識はほとんど必要ないものだろう。
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