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また映画の話

この前「時をかける少女」に感心したが、次に大林監督の新・尾道三部作の一つ「ふたり」を見た。いや、これもよかったですねえ。石田ひかりの映画主演第一作だが、すごくよい。私は「ひらり」のイメージが強かったんだがそれとはぜんぜん違うキャラクターを見事に演じている。これは少女の成長を描いた話だといえばいいのだろうが、そこにやっぱり、魂の底にある「生きようとする意志」が表現されている。こういうのもまた見事に「スピリチュアル」なのだ、と私は思うのですがね。もちろん魂の体外旅行だとか、そっち系のアドベンチャーの意義もじゅうぶん認めるのだが(現在の研究テーマはそっちの方だったりするが)、でも、心の奥底にある深い意志のレベルを感じることができたら、それはまたものすごく深いことだと思う。

映画というのは本来成熟した表現ジャンルであると思う。つまり、音楽では十代でメジャーになるということもあるが、映画監督というのは三十代にならないとできない。青春を描いたとしても、それはその渦中にあるという視点ではなく、もっと成熟した地点からそれを包み込むという表現になることが多い(ただし、単に若者に媚びているだけの駄作もありはするが、それは論外)。

行定勲監督の「きょうのできごと」(妻夫木聡、田中麗奈)というのもそういう感じかも。これ、ある意味ではかなり実験的な作品だろう。というのは何もストーリーらしいものがなく、エピソードの連鎖でしかない。退屈だという人には極限的に退屈な映画だろう。でもこれは要するに「世界」を描こうとしているかなり野心的な作品であるらしいということを感じた。しかし、特に二人の女の子の演技がいい。なんだか、つまらないのかおもしろいのかよくわからないような映画である。退屈だといえばたしかに退屈だが、独特の詩情があるというか、そんな感じだ。ちなみに、英語字幕があるので、これをオンにすると英会話の勉強にいい。ほんとうにどこにでもありそうなあたりまえの表現、「まあがんばってえな」とか「なかなるやるじゃん」というような言葉が英語ではどのように言うのかわかるので、少なくともこの字幕を入れて見れば退屈度は減るだろう。この英訳はすごい上手です。日本人ではこうは訳せないね。

話の勢いで、行定監督特集。

「世界の中心で、愛をさけぶ」 大沢たかお、柴咲コウ、長澤まさみ、森山未来
前にも書いたけど、なんだかんだいいますが、これはいい映画である。原作よりもいい。映像が美しい。長澤まさみはとても魅力的。これだけでも十分だが、ラストも余韻があっていい。たしかに2時間に話を納めているからストーリーにはちょっと苦しいところもあるが、行定監督の詩情は十分に出ている。映像美では彼の作品でも最高の部類。

「GO」 窪塚洋介、柴咲コウ、山崎努、大竹しのぶ
これは傑作です。在日韓国人青年の話だが、窪塚の演技は抜群である。彼に対しては好き嫌いもあろうが、その演技力は認めざるをえないところ。重いテーマだが、生きようとするエネルギーが燃焼している感じで、たいへん後味のよい映画である。

「ひまわり」 麻生久美子
これはちょっとマイナーかもしれないが捨てがたい佳作かも。幸せの薄いはかない感じの少女を麻生久美子が演じているが、クライマックスの美しさはすばらしい。

「北の零年」 吉永小百合、渡辺謙、石田ゆり子
これはDVDではなくこの前の冬に公開されたもの。これまでとは違った歴史スペクタクル系なんだが、3時間の長さにもかかわらず一瞬も退屈しないすばらしい出来である。「きょうのできごと」とは全く対極的なこういう作品も撮れる行定監督の才能は大変なものだと思う。黒縁メガネをかけていて一見するとちょっとオタクっぽい外見をしているが、若手の監督の中ではもっとも注目でありましょう。

で、行定監督から離れるが、もう一つ書きたいのは、

「幻の光」 是枝監督、江角マキコ
この映画はいったい何? これもかなり驚きのものだった。一人の女性が夫を失って再婚するというその日常を淡々と描くだけで、それ以上のストーリーはまったくない。これも見方によっては退屈の極みともいえるが、実は監督はすごいことを考えているということがわかった。それはどういうことかというと、こういった日常の日々、その「現実」というものをある遠い視点から見ている何かを表現しようとしているらしい、ということだ。こういうことを考えて映画を作っている人が日本人にいるというのはほんとうに驚いた。ほんとに全く売れそうもない映画なんだが。江角マキコは演技が下手なんだかそれとも監督の意図であえてそうしているのかよくわからない。しかし本当に途方もないことを考えているのだなあ、と感じ入った。この映画は映像美を鑑賞する作品なので、小さな画面で見てもおもしろくも何ともないです。大画面のワイドスクリーンTVを持っていない人は借りてもしかたがない。それで見たっておもしろいかかどうかというとよくわからないけど(笑)。全体的に黒が多いので映り込みのない液晶TVの方がいいかもしれんね。

というわけでだいたい私の映画における好みはおわかりであろう。私が「宇宙戦争」だの「スターウォーズ・エピソード3」を見に行くわけがないということも明らかである。「四日間の奇蹟」が終わってしまうととうぶん見たいものがないのだが、今度「涙そうそう」が映画化されるらしいと聞いた。妻夫木聡と長澤まさみが兄妹を演じるそうである。これは少し期待できるかも。

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