« ペンギン・ガイド | Main | スピリチュアルにおける「米とおかゆ」 »

かるたと占いの話

ことしも始まったが・・ 年末はアンリの哲学書(フランス語!)をがんばって読解していたのだが、大晦日にはもう疲れが限界に来た。やはり「哲学はきわめて健康に悪い」ということは事実のようで、どうも人間の基本的なバランスを崩してしまうほどの左脳過多になるのだろうか。最近、音楽なども減っているので、もう少し身体性の世界に接しなくては、と思う。

そんなわけで正月からは思い立って、「筆文字のテキストによる古典の読解」という趣味的な世界に走っていた。たとえば古今集を筆写した「高野切」などの本だ。実は、どう書いてあるか脇の方に活字で示してあるので、それを対照すれば解読はむずかしくない。こうやってみると、ふだん楷書の活字体で日本語に接しているのはやや偏った世界なのだなと思う。手書き文字には「ことばの身体性」が豊富に含まれているが、活字はそれを捨象し、純粋な記号にしてしまうのだろう。手書き文字をあまりに軽視するようになると、ことばに対する感覚が狂ってきて、ひいてはそれが精神のいびつさをももたらしかねない・・というようなことを、石川九楊という評論家がさかんに書いているが、たしかにそういうところはある。ただ、彼の本にはちょっと飛躍が多く、「ことばの身体性」というテーマを哲学的に掘り下げるような部分がもう少しあればいい、と思うが。

それから正月ということで、百人一首も・・こちらも、活字で書いてあるかるた札では雅趣が半減する。昔の歌かるたにかんする本を見てみると、尾形光琳のつくった歌かるたというものがある。これはすばらしいものだ。1989年に小学館から出た『百人一首の手帖--光琳歌留多で読む小倉百人一首』という本に全部出ているのを入手した。古本屋検索サイトで見つかるはずである。文字の方も光琳が自ら書いたらしい。

それから1984年に平凡社から出た『歌留多』という本を図書館で見つけたが、こちらはかなりの豪華本。それを見ると、歌かるたの歴史がわかる。百人一首を選んだのは藤原定家であるが、それをかるた形式に仕立てるというのは、南蛮文化の時代に西洋のカード(いわゆるトランプ)が渡来して、それに刺激されたためだろうという。その時代の西洋のカードは、まだタロットカードとトランプとが分化していない時代であり、その図像をみるとだいたいマルセイユタロットに近い。それに刺激されて日本で「天正かるた」が創られたのが、日本でゲーム用カードができた最初のものである。それから「うんすんかるた」という75枚のものができた。そのすべてが『歌留多』にのっているが、マルセイユタロットとくらべると、大アルカナがなくてスイートが5つある。太鼓の文様のような「三つ巴」のスイートが追加され、各スイート15枚。数札は1から9までであとは絵札。その中になぜか一枚「龍」が入っていて、残り五枚は武者姿。女性は入っていない。どういうふうに使うのかはよくわからない(当時の西洋での遊び方もよく知らないのだが、当時はたぶん占いではなくトランプのようにゲーム、賭博に使用されていたはずである)。こうした天正かるた、うんすんかるたは賭博として大いに隆盛したが、賭博を問題視する幕府の禁令が寛政の改革で出され、そのためかるたの代わりに作られたのが花札である、と説明されている。

よくできたカードというのは美しいものである。最近は日本でも増えてきたが、英語圏では「カード付き」というものが精神世界系の本にはかなりよくある。ドリーン・ヴァーチューのエンジェルカードなどは日本でも有名だろう。ちょっと絵がいまいちのものも多いのだが、ヴァーチューの Archangel Oracle Cards はなかなかきれいである。

およそ「遊び」の本質の一つとして「偶然性に身を任せる」ということがあり、それは「宇宙に身を任せる」ことの快感として感じられる、と古来(ホイジンガ以来)の遊び論でいわれていることである。占いを馬鹿にする人は男性に多いが、あまりに左脳中心になっている人は、自我を一時的に宙づりすることの快感を楽しむということがわからない。女性はそのような快感に敏感である。というわけで、宣伝もしないのに女子学生がたくさん「タロット占いをしてくれ」とやってくるのだが、最近はベーシックなライダー・ウェイトのカードを使っている。これにもいろいろバリエーションがあるが、Radiant Rider Waite というものである。こちらは色遣いがかなりはっきりしているが、実際に占うにはとても使いやすいものである。ウェイト系では Universal Rider Waite もいいが、こちらはやや母性的で優しい波動をしているように感じられる。タロットに限らず占いとは遊びであり、遊びでよいのである。ただ遊びというのはなかなか深いものである。宇宙的な遊びというのもあるのだ。

占いを批判する人は、どのカードが出たらあなたはこう、と機械的に決まるものだと思っているらしいが、実際にはそんなに単純なものではない。同じカードが同じ位置で出ても、その読み方は千差万別で、だいたい相手を見ながら直感的に浮かんだことをしゃべることが多い。占いとは実は半分以上はカウンセリングであるというのが実感だ。占いというシチュエーションで、出たカードを前にすると、不思議と相手は自分の心のある部分を開き始めるので、それを敏感に察知して、その人の心の奥に動いているエネルギーを感じ取り、その状況において何か適切なことをそのカードからの連想で思いついて言う、という感じで実際には進んでいく。そういうふうに「自分の心が受け止められた」と感じた場合、それを「当たった」と理解するわけである(だからガードの固い人は「当たりにくい」ことになる)。べつに神秘的なところがあるわけではない。

高野切第三種 伝紀貫之筆高野切第三種 伝紀貫之筆
二玄社編集部


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

伝統かな文字読解の初歩におすすめ。
「変体かな」の解説がある本(かな書道の入門書など)と、古今和歌集の注釈・現代語訳も用意すれば完璧。
図書館にもあるはず。

百人一首の手帖―光琳歌留多で読む小倉百人一首百人一首の手帖―光琳歌留多で読む小倉百人一首
尚学図書言語研究所


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

品切れなので古本になるが、1000円前後で買える。


書とはどういう芸術か―筆蝕の美学書とはどういう芸術か―筆蝕の美学
石川 九楊


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

石川九楊は最近かなりはやっている。たとえばこれ。いささか強引な論法も目立つが・・


Archangel Oracle Cards: a 45-Card Deck and GuidebookArchangel Oracle Cards: a 45-Card Deck and Guidebook
Doreen Virtue


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

英語力要。日本語版もあるのかもしらんがよくわからない。
男でもっている人はあまりいないかもな・・


Radiant Rider-Waite TarotRadiant Rider-Waite Tarot
Us Games Systems


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

« ペンギン・ガイド | Main | スピリチュアルにおける「米とおかゆ」 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

September 2017
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ