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シュタイナー『魂のこよみ』

シュタイナーの『魂のこよみ』を、遅ればせながら、取り寄せてみた。
昔、買おうと思ったときには品切れで日本語版が出てなかったのだが、最近は数種出ているらしい。私が買ったのはちくま文庫版の高橋巌訳で、ま、これがスタンダードでしょうね。

見ると・・おお~~!! 予想を超えるすごさ! というのはスピリチュアルな波動として伝わるものがすごいということ。
これはある意味で、シュタイナーを理解するためのもっとも早い道かもしれない。

ドイツ語原文ものっている。高橋訳もかなりいいのだが、やはり、原文のもっているエネルギーには及ばない。
日本語訳は一つの手がかりにして、原文に入りこむ。

復活祭を基点に第何週にあたるかでそれぞれマントラ的な詩句がある。今年の復活祭は4月16日(と親切にも巻末に復活祭期日一覧表が出ている)なので、今週は第12週になるはずだ(といっても、あまり確信はないが・・)。

その詩句をいろいろ見ていると、基本的なベクトルは、「パーソナルな自我から宇宙自我の自覚へ」という感じのもののようだ。宇宙自我とは、前に紹介した佐藤美知子『瞑想から荒行へ』でも出てきたように、「もう一つの自分」があるという自覚だ。

私は最近、もの「もう一つの自分」という感覚が言われているかどうかが、ある人が本当にわかっているかどうかの一つの基準になるのではないか、と思うようになった。
やたらに「無我」だとか、自分を無にするとか、「なりきる」というようなことばかり言っていて、「もう一つの自分」という言葉が出てこないのは、本当の深い体験をしたことがない人ではないかな、という感じがするのだ。仏教で言う無とは、ちょっとやそっとでわかるようななまやさしいものではない。「もう一つの自分」がはっきりわかって、なおそれをも超えたところ、つまり如来の境涯をも超えたところの絶対無こそが本当の無なのだ。

宇宙の奥にいる「もう一つの自分」という感覚というものはたしかにある。「宇宙自我」と、仏教的な無我とは決して矛盾しない。矛盾すると思っている人は本当にはわかっていないだけだ、と私は考えている。宇宙自我ということがわからない人は、無我ということも本当にはわかっていない、という意味である。

「私の根源とはなんなのか」ということが、スピリチュアルな問いとしてディープなものである。「無です」と簡単に答えてもらいたくない。それを言葉で言うのはあまりにも簡単だ。それなら、本当に絶対無というポジションに立って言ってもらいたい。そんな人はほとんどいないのだ(それは、ラーマクリシュナやヨガナンダなどのレベルになる)。「もう一つの自分」、真我の自覚というのは、絶対無よりも手前にあるステージである。絶対無を知っている人が真我のことがわからないはずない。真我=神我をすっとばしてすぐに無、無と言っているような人は「ペーパー禅」のヤカラである。まずは「私の根源とは何か」という問いに答えてほしい。日本のこれまでの「スピリチュアル思想」には残念ながら「自分の根源とは何か」という問いが少なかったし、神我と絶対無の関係がまだよく理解されていない気がする。その意味で、神我の自覚を説くシュタイナー思想は日本人の欠落を埋めてくれると思う。いいかえれば、シュタイナー思想との対決によって東洋的思想は鍛えられ、表層的な理解やごまかしを除去していくことができる。

さて、「魂のこよみ」だが、第12週の詩句はかなりディープだった。(なお、ドイツ語のウムラウトは、あとにeをそえる形式で表記する)

Der Welten Schoenheitsglanz,
Er zwingt mich aus Seelentiefen
Der Eigenlebens Goetterkraefte
Zum Weltenfluge zu entbinden ;
Mich selber zu verlassen,
Vertrauend nur mich suchend
In Weltenlicht und Weltenwaerme.

<読み方>
デア ヴェルテン シェーンハイツグランツ
エア ツヴィンクト ミッヒ アオス ゼーレンティーフェン
デア アイゲンレーベンス ゲッタークレフテ
ツム ヴェルテンフルーゲ ツー エントビンデン
ミッヒ ゼルバー ツー フェアラッセン
フェアトラウエント ヌア ミッヒ ズーヘント
イン ヴェルテンリヒト ウント ヴェルテンヴェルメ

ドイツ語の発音をカタカナで、というのは無理な話だが、まあ、ベートーヴェンの「第九」をフリガナで歌うようなノリで(笑)

ちなみに英訳 (The Calendar of the Soul, Anthroposophic Press, 1982)

The radiant beauty of the world
Compels my inmost soul to free
God-given powers of my nature
That they may soar into the cosmos,
To take wing from myself
And trunstingly to seek myself
In cosmic light and cosmic warmth.

以下は私の訳・・というより、日本語による書きかえ。高橋巌訳に不満というわけではないんだが、いちばん自分がしっくり来る訳を考えてみた。

宇宙の輝かしい美・・
その美は、私の魂の深みへと、おしよせてくる。
私という存在は、いまここにあり
そこに、神々の力が、ひそんでいる・・
その神々の力は、美の力によって、ときはなたれ、かけのぼり、
めくるめき宇宙の流れに、はいりこんでいく。
私は、自分という枠から、自由になり、
身をまかせる・・本当の「私」を、探しつつ・・
宇宙の光、そして、宇宙のあたたかさの、なかで。

Der Welten Schoenheitsglanz,
der Weltenは二格(所有格)。ここでWeltは世界・宇宙なんだけど、ここで普通の天文学的な宇宙なんかを思い浮かべては駄目なのである。宇宙とはもっと深いものだ。まずそういう「宇宙感覚」自体がわからないとちょっとつらいんですね。
この行では、宇宙の壮大、荘厳な美の世界をイメージする。そして、

Er zwingt mich
これは it compels me ということなんだけど、その宇宙的な美が、私に何らかの作用を及ぼす、働きかけるという「力が作用するという感覚」を呼び起こす。

aus Seelentiefen
魂の深みから・・ここで、「天界」の壮大さから、一転して、「私」の奥深い場所へと意識が向け変えられることに注意。

Des Eigenlebens
これは二格(所有格)。ここで、今ここに私の「生」があるという「自己存在の感覚」が喚起されるようだ。eigenという語には「ほかならぬ、かけがえのない私の」というニュアンスがこめられる。

Goetterkraefte
複数。神的な諸力、というか。それが「私が私として存在することの中にある」ということ。

Zum Weltenfluge zu entbinden
Weltenflugeとは、Welt + Flug の複合語で、Flug とはFlight飛行、飛ぶこと、という意味。そうすると、Weltenflugeというのは、宇宙の力があたかも虹色に輝きながらすごいスピードでごうごうと流れているような領界、というイメージがしてくる。そういう領界へと、entbinden解き放たれるのだ、ということ。つまり私の魂の中にある、神的な力が、いまの自分という境界を越えて、飛び立ち、高く上っていって、ついには宇宙的な流動の中へと飛びこんでいく・・

Mich selber zu verlassen
Vertrauend mich zu suchend
verlassen, vertraunedといった語は、身をゆだねるという感覚が強くしてくるもの。
ここで出てくる「私を探す」のmichは、もはやパーソナルな自我ではないわけで、本来の私、宇宙的な私のことになる。つまり、ここらへんはすべて、小さな自我から宇宙自我の覚醒への過程を述べているのである。

In Weltenlicht und Weltenwaerme.
宇宙の光、宇宙の暖かさの、なかで。
ドイツ語の響きからすると、前二行は、「動き」を感じさせるが、この行は、宇宙に「行き着いた」という「やすらぎ」の感覚がする。宇宙の懐に帰ってきたという「帰着」の感覚である。そこに「私」はいる。その本来の場所にいる「私」の深い喜びの波動をここに感じるべきであろう。

ここで、文字通り、「宇宙の光」ということ、「宇宙の暖かさ」ということが実在するのだと私は言いたい。それは比喩ではない。それは「魂の感覚」として感じられるものである。宇宙的な光というものは実在する(ま、実在とはどういうことか、哲学的に吟味すると話はフクザツになるからやめておくが)。とは言っても、なかなか、感じようと思って感じられるものではないが、そのためにこういう「魂のこよみ」みたいなものがあるわけで、繰り返しこの言葉によって喚起されるイメージに入りこもうとしていると、やがて、本当に、「こういうことか」とわかるようになっていく、ということなのであろう。

詩を読むについては、やっぱり原文を見ることがいかに大切か、ということですね・・
私は外国文学専攻の大学院生だったから、原文のテキストを徹底して読むということは、いやというほど鍛えられました。

というわけで、

魂のこよみ魂のこよみ
ルドルフ・シュタイナー 高橋 巖


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