ホログラフィー宇宙観――タルボット『投影された宇宙』
つづいて書籍紹介~ マイケル・タルボットの『投影された宇宙』は、まえに『ホログラフィック・ユニヴァース』として出てたものの復刊ですね。これ、ニューサイエンス系としてはかなりの名著と言ってよかったが、しばらく入手不能になっていた。ホログラフィーによる宇宙モデルってのはデヴィッド・ボームでおなじみのものだが、それを発展させたもの。
もっともこういうニューサイエンス、つまり量子物理学から意識の問題までを統一したパラダイムとして構想するってのは、たしかに考えたくなるような魅力あるものではあるが、ケン・ウィルバーも指摘するように「カテゴリーエラー」ではないかという疑いを捨てきれない。
ただ、いまはもう「科学=唯物論」とはいえない、ということだ。科学から多次元的宇宙観を引き出すこともできる。つまり、「唯物論は科学的に見て正しい世界観だ」などという世間の妄想を正すということでは意味があるということだろう。科学自体は世界観ではなく方法論なので、どのような世界観にも結びつきうる。だから、唯物論ではない世界観で科学を解釈しようというのは「思想」のジャンルに属することである。そういう試みがニューサイエンスなのだ、ということになる。ひところほどははやってないですけどね。でもこのほかにアーヴィン・ラズロなんかの本もかなり出てきてはいる。
ともあれ、読むとかなり面白くはある本である。
![]() | 投影された宇宙―ホログラフィック・ユニヴァースへの招待 マイケル タルボット Michael Talbot 川瀬 勝 春秋社 2005-04 by G-Tools |