ラズロの「叡知の海・宇宙」
もう一冊はこれ。
![]() | 叡知の海・宇宙―物質・生命・意識の統合理論をもとめて アーヴィン ラズロ Ervin Laszlo 吉田 三知世 日本教文社 2005-03 |
最近はあんまりはやっているというものではないが、「パラダイム・シフト本」である。
量子論のノンローカル性の議論など、科学でのノンローカル・パラダイムの進展に目配りしている。
一時期かなり出てその後下火になっているニューパラダイム論だが、まだ少しずつ出版されているようだ。
原題は「科学とアカシックな場――万物の統合理論」。「アカシックな場」とは言ったもんだ。
ラズロが描くのは、科学的語彙を交えた、「根源的生命エネルギー場」の宇宙ヴィジョンである。すべてはその根源的な生命場の運動である。ラズロの文章には詩的な美しさがみられる。
これはウィルバー的な認識カテゴリー論を厳密に適用するとカテゴリーエラーということになるかもしれないのだが、科学の話を織り交ぜると一般の人に対する説得力はかなり違う。これは身をもって感じるところである。
一方では科学的知識を一切、デカルト的懐疑にかけ、今ここにおいて絶対確実な「私とその経験」だけから出発して意識と万物の成立を解き明かす哲学の立場に美しさを感じるが、こちらのアプローチはほとんどの人には理解できないという致命的な難点がある(笑)
ラズロのこの本は、マイケル・タルボットの「投影された宇宙―ホログラフィック・ユニヴァースへの招待」や、マクタガートの「フィールド 響き合う生命・意識・宇宙」と同じような感じだが、こういう情報が少しでも多くメディアに露出していけばシフトが早まるだろう。量子論を参照しつつ新しい世界ヴィジョンを描くということではこの三点がオススメである。まあ、カプラの「タオ自然学」に始まる路線ではある。知っている人は知っているが、知っている人の数はなかなか増えない。
ただ、ノンローカルということは非物質領域に共通した特性なので、ノンローカルな諸領域においても階層性があるということを言わないと宇宙モデルとしては完結しないと思う。言ってみればモンローの言うフォーカスレベル。そこまで言わないと、「探求者」たちにとってはプラクティカルではない。もうそういう時代になっている。


