魔術的芸術
アンドレ・ブルトン『魔術的芸術』を読み始めたが、この本、むちゃくちゃ面白いです! あっちこっちの面白い画像をあつめて、それを魔術というキーワードでいろいろ論じ、近代的世界観に対して想像力の復権を訴えるという内容なんだが、のってる画像がかなりいい。これを読んでると、ブルトンたちがやろうとしていたことは、ルネサンス的な「マギア」の世界の復興なんだなあ、と納得する。マギアってのは、すべてがつながっているという世界感覚、それだけじゃなくて、実際に離れているはずのものをいろいろつなげてしまおうという具体的技法のことで、今で言えば遠隔ヒーリングなんかリッパなマギア、魔術であるということになる。魔術と言うがそれはアヤシイものというより、本来世界というのはそういうもんでしょ、ということだし、古代人ってそういう世界をよく知っててそれを「使う技術」を持っていたんじゃないか、という問題視角である。
こういう魔術の本質については、ジャン・セルヴィエというフランスの人類学者がいてエラノス会議にも出ている人なんだけど、その人が書いた文庫クセジュの『魔術』って本がよく書いてある。ただこういうのに限って邦訳は出てないんだが(笑) セルヴィエはいいですね。ルネサンス的世界観の復権をマジに目指してる。ルネ・ゲノンもそうなんだけどフランスには実はそういう精神伝統がどこかにあって、それは日本の研究者なんかは立ち入らないところだが、西洋神秘思想の研究は意外とさかんだったりするのだ。
ともあれ私も自分のできることを考えてみると立派な魔術師なのですよ(笑) そういうマギアな世界を見せてくれるのが『魔術的芸術』だが、考えてみるとカイヨワなんかもこういう伝統にあるんだな、という気もする。これは一種の宇宙感覚を味わうための本といえる。
![]() | 魔術的芸術 アンドレ ブルトン Andr´e Breton 巌谷 国士 河出書房新社 2002-06 |


