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エーテル体について

さてここで、平井センセのHPに指示されていた、論文を入手して読んでみた。すると16世紀のフェルネルの言として興味深い一節が引用されていた。D. P. Walker "The Astral Body in Renaissance Medicine" in Music, Spirit and Language in Renaissance, London, Variorum 1985, IX, p.119

ウォーカーがラテン語から英語訳したものをさらに和訳してみると


spiritの必要性や、その実質をもっとよく示すために、私たちは、古代の哲学者の説を再訪し、思い出さねばならない。新プラトン主義者たちは、以下の説を初めて提示したのであった。すなわち、二つのまったく異質な性質のもの(魂と肉体)は、何か適当な媒体なしにはつながることはできないので、私たちの魂は、万物の至高なる創造者によって作られ、この厚く、硬い体へと発出し、移住する前に、かんたんな衣として、星のような、光り輝く、純粋な身体をまとうのである。それは、不死かつ永遠のものであって、けっして魂から引き離されることなく、それなくしては、魂はこの世界の住人たることはできないのである。そして、もう一つの身体が魂を包む。それは同じように微細で、単純であるが、純粋さや輝きにおいては、最初の身体よりもやや劣る。これは至高の創造者によって作られたものではなく、微細な元素の混合から成り立っているものである。それゆえそれは、大気的ともエーテル的とも呼ばれる。これら二つの身体をまとい、魂はこの脆弱な、死すべき肉体に入る。あるいは、いまわしい、影の牢獄へと投げ入れられる。そして地上の客となる。それは、この牢獄を脱出して、喜びと自由のうちに故郷へ帰還し、神々とともに住まうようになるまで続くのである。

なんとも新プラトン主義全開の文章だが、ここでは中間次元である微細身が二つに分けて論じられているのは興味深い。これはたぶんフェルネルの独創ではなく新プラトン主義の伝統にあるものだろうと思う(フェルネル自身がそう言っている)。しかし少なくともプロクルスの「神学綱要」にはこの考えは出てこない。フェルネルの「エーテルの体」の概念はどこから出てきているのか、それが知りたい。

ここでは、エーテルの体の方は「至高の創造者によって作られたものではない」ということなので、この地球に肉体を持つために必要なものであり、一方もう一つの、アストラルの体の方は、より魂に近接して、それから離れないものとしてある。ということは、肉体を離脱したとき、エーテルの体は容易に消滅するが、アストラルの体は必ずしもそうではない、ということになろう。そしてこういう考え方は、人智学ともほとんど同じであるらしいということもわかる。つまり先日、「西洋にはエーテル体の概念は伝統的にはない」と書いたのは訂正を迫られる。もっとも、この区分はここで初めて見たもので、その区分がなく論じられている場合も多いことは事実である。クリアーノの『ルネサンスのエロスと魔術』やウォーカーの『ルネサンスの魔術思想』などにはまったく触れられていない。

ただウォーカーの論文自体は、エーテルの体についてはまったく関心を払っていない。もっぱら占星術とフェルネルについて語っているが、星の影響があるのは当然アストラル体の方であって、エーテル体ではない。彼にはエーテル体というテーマへの問題意識がまったくないのである。ましてそれをヴェーダーンタの多重微細身体論と比較するなどという視角は思いつくことはないだろう(神智学のエーテル体概念はたぶんインド哲学の影響を受けていると思う)。

なおウォーカーも注意しているが、アストラル体などの概念は、精神史のなかで持続しているとは言っても、決して「おおっぴら」にはあまり言われることはなく、どちらかといえば危険な思想であった。いうまでもなく、それは魂の先在という異端説につながるし、教会との衝突が予想されたからである。

ともあれ、「西洋精神史におけるアストラル体とエーテル体の概念」というテーマについてはもう少し調べてみる。(と、ここで誤解ないように言っておくが、このようなことは研究者レベルのことではない。あくまで私は研究者がやったことを利用させてもらっているだけである。これは他の勉強にしても同様で、哲学にしても決して研究者レベルの仕事はしていない。思想史的なことを研究者レベルで遂行する能力は私にはないので、私が専門として行うのはあくまで「霊性思想の現代的再創造」であり、過去の思想については、研究者の仕事を利用しつつ、自分の思想的形成に役立てるというだけである)。

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