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2007.07.04

ヘーゲルとヘルメス主義思想

ヘーゲルについてのすごい研究書(英文)を入手した。ヘーゲルはヘルメス主義の思想家であるということを論証しようというものだ。

ヘーゲルはベーメの影響をすごく受けていて、彼の哲学はベーメ思想の概念化であるらしい、という話はもう20年以上も前に聞いていて、そういうことのまとまった研究があれば読みたいと思っていた。だからこの本は20年くらいずっと読みたいと思っていたたぐいの本なのである。

シェリングとベーメとの関係というような論文は日本でもだいぶ出てきているので、ヘーゲルについてはどうなのだろうか? この前ヘーゲルにおける「エーテル」についての96年の論文を取り寄せてみたけど、それらしきことは何も書いてなかったけどなあ。

しかしこの研究書、トンデモ本なのかと思ったらそうではなく、れっきとした大学出版局から出ているし、また著者は、『ケンブリッジ版ヘーゲル必携』という論集にも名を連ねているのだから、少なくともある程度は学界でも認められている説なのだろう。

つまり私の言い方でいえば、ヘーゲルは「普遍神学」を作ろうとした思想家の元祖ということになるだろうと思う。人間精神はいかにして絶対精神へ高まり、また絶対精神の顕現としてこの現象の世界が生成するか、という宇宙的ドラマを描いているのである。前にも述べたように、そういう哲学そのものが「絶対精神の顕現そのもの」だというのは誇大妄想である。しかし、一つの思考実験としてみれば、少なくとも西田哲学などよりも何倍もスケールが大きなものであり、霊性哲学の一つの極点であるには違いない。

基本的なことのおさらいをしておくと、デカルト-カントの懐疑哲学によって、主観と客観世界(もの)との間に亀裂が生じてしまった。その二元論をどう乗り越えるのかというのが、ドイツ・イデアリスムスの思想の課題だった。そのドイツ・イデアリスムスとはベーメを含むヘルメス主義的思想という背景を持っていたということである。つまりここで、ヨーロッパの「もう一つの精神史」の根深い持続を見ることができるということである。

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