ダスカロス『エソテリック・ティーチング』
このところ座右に置いてめくっている本は、ご存じ?ダスカロスの『エソテリック・ティーチング』である。
これはかなり本格的に書かれた「霊的哲学」の本である。現代のスピリチュアル本は数々あるけれど、どれか一冊だけを選んで徹底的に読み込むとしたら、といわれるとこの本をあげることになるかもしれない。はっきり言って、決定版といっていい。
この本を思想史の中で対比するとしたら、たぶん、ヤコブ・ベーメの神秘主義哲学の本と比較できるだろうと思う。ベーメの本もたぶん、その当時としては、このダスカロスの本のような感じで、人々に受け止められていたのではなかろうか。ただしベーメは、錬金術用語を使っているのでその素養がない現代人にはさっぱりわからないが、ダスカロスはやはり現代人のために書いてある。
古典ばかりではなく、現代人は現代に生まれた霊的哲学も読むべきだ、というのはそういうことである。
とはいっても、この私でさえ、なかなか簡単ではない(笑) しかし、ほかの思想にはなかなか出てこない、「人間とは、人間というイデアを通過して生まれてきた」というように、イデアの存在をはっきりと言い表しているのもたいへん共感が持てる。それはほんの一例である。理論ばかりではなく実践面への示唆もかなりあるし、これまでは開示されていなかったような情報も含まれているようだ。
ただやっぱりキリスト教、それもギリシア正教がベースとなっているから、ロゴスやキリストのとらえ方など、このブログでも何度かとりあげている教父思想や、ロースキーの『キリスト教東方の神秘思想』みたいな思想に接していると、より理解しやすい面もあるのだが・・
しかし存在の多次元性も明確に述べられているし、私の知る限り、最も厳密かつ明晰に述べられた現代の神秘哲学であろう。
私はこの本を、伝統的な霊的哲学と比較考究するという論文を書いてやろうという構想も持っている。
とにかく、凡百のトランスパーソナル関係本など読むのは、時間のムダ。この本には、現在の地球人が知性によって理解できる範囲のことは、だいたい全部書いてあるのだから。
というわけで読むべし・・だが、マルキデスの三部作を読んでない人は、そちらが先かもしれない。実践編として『エソテリック・プラクティス』があることはいうまでもない。
エソテリック・ティーチング―キリストの内なる智恵 秘儀的な教え ダスカロス Daskalos ナチュラルスピリット 2006-12 |
ちなみに伝統ものでは、依然として、ニュッサのグレゴリウス、マクシモス、それと谷隆一郎先生の『東方教父における超越と自己』ですよ。もっとも、教父の原著の方は、多分に波動グッズとなっている面もあるが・・(笑)