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西欧中世哲学

このところは、ヨーロッパ中世哲学を調べている。

もともと、私はキリスト教教父の神秘神学を愛好していた。教父というのは、西ヨーロッパの中世哲学以前に存在したキリスト教思想で、これは東ヨーロッパの方に受け継がれた。
西では、修道院から出てきているベルナルドゥスなども教父的な思想だが、西欧では大学が成立して、そこでアリストテレスの学問が盛んになり、キリスト教神学とアリストテレスを総合しようという試みが傾向として強くなってくる。これに対して東方(ビザンチン)ではひきつづき教父的な神学の伝統が維持された。これが大きな違いとなってくる。

したがって、西欧の中世哲学は、純粋な神学を愛好し、現代における普遍神学を構想する私にとっては、東方神学よりもむしろ「傍系」と感じられてきた。

それでも、西欧の中世哲学もまたあくまで神学と一体のものであり、基本的には信仰の確認と神の栄光を増すことを目的として考えられてきたことも疑うことはできない。エティエンヌ・ジルソンは、中世哲学は神学と一体のものである「キリスト教哲学」として理解しなければならないと言ったが、これはきわめてあたりまえのことである。日本での中世哲学研究者も、多くはキリスト教に関心を持っている人が中心で、カトリック教徒だったりする。上智大学などはその典型的なものである。

山内志朗という研究者がさいきんはやっているが(『普遍論争』『天使の記号学』などを出している)、それはちょっと違って、神学とは関係がない。『普遍論争』平凡社ライブラリー版にを回顧した文章が出ていたが、特に、神の問題に向き合ったり、存在の神秘を感じたり、癒しがたい魂の憧れを経験したというような青春時代ではまったくなくて、なんとなく中世哲学のテキストを読んでいるうちに研究者になってしまったような感じだ。変わっていると感じるが、欧米での中世哲学研究というのはそういう方が主流らしい。日本でもオッカムとかさかんにやっている人などはそういうタイプだ。

私はやはり、古いと思う人がいようとも、ジルソン的なとらえ方が基本だと思うし、神と向き合うことを回避した人が中世哲学を研究するということにはどうもしっくりしない。なんと昭和24年に翻訳が出たジルソンの『中世哲学史』は、今でも読みごたえはある(ただ、ジルソンはエリウゲナが嫌いらしい。ジルソンは新プラトン主義を好まないところがあって、中世哲学に対する新プラトン主義の影響を軽く見ようとする傾向がもしかするとあるかもしれない)。

ジルソンはむろんトマス・アクィナスを頂点として考えるが、私自身はエリウゲナとボナヴェントゥラが好きである。そもそもトマスがめざしていた「神学とアリストテレスとの総合」というテーマ自体が現在ではあまり現実的意義の少ない問題設定である。神学と哲学との総合を考えるなら、フッサールやハイデッガーなどのほうが、アリストテレスよりもよっぽど神学との親和性があるし、融合しやすい。神学とアリストテレスでは水と油である。そういう無理なことをあえてしなくてもいいのである(ちなみに、現代では「神学と心理学を融合しよう」などというケン・ウィルバーみたいな人もいるが、これも水と油を混ぜようとしていることに似ている)。

私自身の普遍神学は、基本的には新プラトン主義と唯識を最もベースとして使っている。それによって、存在階層モデルと輪廻転生の問題、魂とその本体という問題は、すべてすっきりと理解できると考えている。その意味では、新々プラトン主義であり、また新唯識思想でもある。現代哲学では、現象学の立場は唯識と近接したものであり、現象学を通して現代哲学との総合がある程度可能になるという見通しだ。

従って、西欧中世哲学でも、あまりにアリストテレスにどっぷりしているものよりも、新プラトン主義の色彩が強い思想の方が、私との親和性は高いことはたしかである。

マレンボンの『後期中世の哲学1150-1350』という本を見ると、中世の大学での学問の定式みたいなものがよくわかる。きわめて難解で煩瑣であり、かなり頭が爆発しそうであって、これに深入りすることはためらわれる。「スコラ」というのは学校という意味であるから、そういう「大学で成立した知的行為」として中世哲学がある。中世でも初期には、ベルナルドゥスなど、修道院を中心とする瞑想的な思想が多かった。東方世界ではずっとそれが主流になっていたが、西欧ではだんだん大学が中心になり、修道院的霊性から神学が出てくることが少なくなっていった。それが東西の思想の大きな差となっていく。

西欧中世哲学のこともいろいろ勉強しているが、自分が好きなのはやはり教父の思想である。

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