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伝統主義思想とそれにつけ加えるもの

またもナスル先生。最新刊の『真理の庭園』は、スーフィズムの教えをもとに霊的世界観を要約して示したもの。これはスーフィズム「研究者」としてではなしに、自ら「スーフィー」として、実践家として書いたもの。

0060797223 The Garden of Truth: The Vision and Promise of Sufism, Islam's Mystical Tradition
Seyyed Hossein Nasr
HarperOne 2007-09

知るべきことがコンパクトにまとまっているな~ と感心しきり。

これと、思想哲学部門をまとめている Islamic Philosophy from its Origin to the Present をそろえれば、イスラム思想・霊性はほとんど概観できる。

ナスル先生はシュオンの流れをくむ伝統主義哲学者でもあるが、シュオン自身の本よりも、この本の方がずっとわかりやすい。特にスーフィズムという限定を付すことなく、「霊的世界観入門」としてもいいものではなかろうか。

私のいうスピリチュアル哲学というのも、コアの部分では伝統主義哲学なのである。

ただ、少しだけ、ナスル先生のヴィジョンにつけ加えたいものがある。それは第一には、転生論である。これは仏教的霊的風土に育った人間が、伝統主義思想に対してつけ加えるべき要素だと思っている。

もう一つは、キリスト教思想に内在していた、地球神化論である。ナスル先生は、地球が神化の道を歩むというヴィジョンを肯定していない。それは歴史のレベルと霊的レベルを混同することだと反対している。要するに、「この地上に神の国は実現するのか」ということだ。このヴィジョンはキリスト教にはあるがイスラムには決して存在しないものであるらしい。しかし、地球神化というイデーをどう受け止めるかということはもう一度考えてみる価値がある。

第三は、エネルギー論的視点である。つまり神の創造の息吹、「スピリトゥス」が、全存在に行き渡っており、この霊的エネルギーの活用が、霊的発達においても重要な意味を持つ、という視点である。これは修行論につながるが、これもまた、東アジアの「気」の伝統にある人間から言うべきことであるように思われる。

第四には、「世界霊魂」anima mundi の問題をもう少し前面に出して、地球領域の性質について考察することである。

世界の多次元構造、身体の多元性(微細身体の存在)、天使的存在とその恩恵――などの要素はすでにナスル先生のヴィジョンに入っているので、つけ加えることもない。ただ微細身体論は霊的エネルギー論との関連でとらえていくことができる(エネルギーと意識との関係という問題も入る)。

これはむしろ、「ピュアな伝統主義思想」を提示するものである。しかしまた同時に、現在の多くの日本人のように、特定の宗教に深くコミットしない状況で、つまり観音もミカエルも受け入れるような精神状況において、霊的な道とはどのような形であり得るのか、という問いを基本にもっているのである。

なお、私がウィルバーに批判的なことをいうのは、ウィルバーは、伝統主義思想にいろいろなものをつけ加えて(それが西洋心理学とのドッキングということだが)、違うものにしているからである。彼の、世界の多次元階層についての理解も、伝統的な理解(新プラトン主義など)からは相当にずれている。こういうものを「いい」と言う前に、まずピュアな伝統主義思想を知ってもらいたい、というのが私の希望なのである。

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