井筒俊彦『意識と本質』
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意識と本質―精神的東洋を索めて (岩波文庫) 井筒 俊彦 岩波書店 1991-08 |
いや、ひさびさに再読した。この本はやっぱり面白い。というのは扱っている世界が、あちらからこちら、めくるめく饗宴という感じになる。
プラトン、新プラトン主義、イスラーム哲学(イブン・シーナー、イブン・アラビー)、ヴェーダーンタ、サーンキヤ、ヴァイシェーシカ、禅、孔子、宋学、真言密教、カバラ、シャーマニズム・・
しかし気がついたのは、この本には、結論がなかったんですね。意識と本質という問題について、東洋哲学をいくつかに分類したという本であって、「井筒哲学」を展開しているわけではないのだった。
西洋哲学ではドゥンス・スコトゥスくらいしか出てこなくて、近代哲学を無視しているのも小気味よい。
「意識と本質」というが、井筒のねらいとしてはむしろ「深層意識と本質」という感じなのである。深層意識という領界から本質論を照射するわけで、こういう試みは近代哲学にはないものだ。


