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ロシア哲学の可能性

このところ、ロシア哲学について読んでいる。ロシア哲学は東方キリスト教を受け継いで、霊的ヴィジョンとしての哲学を追求している――という点で、私はお手本の一つとしている。とはいっても、めぼしい人はみな、国外に亡命しているという厳しい現実があるが・・

ロシア哲学は、日本ではあまりはやっているとはいいがたい。『ロシアの宇宙精神』は快著であるが、文脈の知識がなくいきなりこれを読むとトンデモの世界に見えるかもしれない。実は、プラトン的思考とキリスト教的イデーというものがわからないと、ロシア哲学のやろうとしていることはなかなかわからない。デカルト以降の西欧哲学しか知らない人には理解不能なところがある。しかしある意味では、近代西欧哲学など、それほど一生懸命勉強する必要もないと思うが・・

とはいうものの、そういうロシアの精神史的背景まで入れて、ロシア哲学史の全体を概説してくれるような書物は、残念ながら日本にはない。ロシア思想史とか題名についている本はあるが、あまり優れたものではない。ベルジャーエフの『ロシア思想史』が出ていたが、これはかなりベルジャーエフ流なので一面的とも言えるだろう。日本のロシア思想研究者は、まずきちんとしたロシア思想史概説書を世に出す義務があると思うが、あまりにも専門的な論文だけ書いていてもらっても困るのだ。どこが出してくれるの? という問題もあろうが、補助金でも取ればよいのだ。

そんなことで困って、英文の文献を探したらいいものが見つかった。ニコライ・ロースキーのロシア哲学史である。なんと、『キリスト教東方の神秘思想』のウラジーミル・ロースキーの父親だというのだから、世界は狭いですね。いやこれが、ものすごい面白さ。メインとなっているのは、やはり、宗教哲学、霊的哲学の系統で、ソロヴィヨフ、フロレンスキー、ブルガーコフ、ベルジャーエフ・・などにページが割かれているが、ニコライ・ロースキー、つまりご本人も登場しているというところは面白い。そのあとはまだ読んでないが、最後には息子のウラジーミル・ロースキーで締めくくられている。

霊的思想というものには、こうしたプラトン的光、キリストの光が多少とも入ってこなくてはならない。日本によくあるような、仏教だけをベースとして、プラトンやキリストなど存在しなかったような顔をしている思想では物足りないのだ。なぜかといえば、仏教では(たぶん空海の密教哲学などを除けば)、霊的なハイアラーキーや、「宇宙と人類を導く聖なる意志」と、宇宙から注がれる愛のエネルギーを享受するというイデーが、十分に出てこないからだ。たとえばケン・ウィルバーは基本的にプラトン・キリスト教的なものをすべて切り捨てて、仏教(特に禅)と西洋の深層心理学をドッキングさせて霊的思想を造ろうとしているが、こういう発想法は「まちがい」と言うつもりはないが、人類の霊的思想全体を受け止めていないパラダイムではなかろうか、と思うのである。

ロースキーのロシア哲学史を読んで、私が特に興味を持ったのは、ロシア哲学に一貫して流れる「全一」というイデーだ。そして、世界を作り出す「永遠に女性的なるもの」ソフィアの存在。ソフィア論はロシア哲学の伝統だが、ソロヴィヨフのそれはまだちょっと曖昧なところを残しているようで、ソフィア論が詳しく展開されたのはブルガーコフであるようだ。彼のソフィア論は一冊読んだことがあるが、もう少し、ブルガーコフの著作にあたってみることにしたい。さらにそこから「聖霊論」とからみ、それが微細エネルギー的ワークや波動医学的ヒーリングの問題にも接続していくとおもしろい。

いちおう、『ロシアの宇宙精神』をあげておこう。もっと背景の解説がほしいところだが、こういう本がともかく出ているということは評価すべきことだ。

4796702032 ロシアの宇宙精神
西中村 浩
せりか書房 1997-01

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