『スピリチュアル哲学入門』について
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スピリチュアル哲学入門―魂と宇宙の根源へ向かって 菅原 浩 アルテ 2008-12 |
このブログでは、「本の話」というカテゴリーを設けて、いろいろ本の紹介をしていくことにしたい。このカテゴリーの記事一覧を見ればすぐに本の情報にアクセスできるようにする。
この『スピリチュアル哲学入門』は、哲学といっても、プラトンなどを意識した文学的対話形式を採用している。ふつうの、抽象概念で構築された文体の哲学は、必ずしも普遍的ではないと考えるので、より自由な表現を求めた。その意味で、アカデミズム哲学とは袂を分かっているものである。
また、「スピリチュアル」とはいっても、もちろんそれは、いまある特定のタレント霊能者に結びつけて考えられている意味と同じではない。ここでは、より伝統的な理解のしかたに立っている。「あとがき」を少し引用してみる。
私が理解しているスピリチュアルとは、むしろ人類の思想哲学の本道に属しているものなのである。つまり、もっとも基本的なものであり、哲学というものの根源にかかわっている。
「スピリチュアル」とは「スピリット」がもとになっている。その形容詞形である。それでは「スピリット」とは何か。伝統的には、その意味は大きく二つある。それは、まず、宇宙の根源そのものである。キリスト教では「神」であるし、神のペルソナである「聖霊」はホーリー・スピリットである。本文中では、この三位一体という深遠なるアイデアにはあまり言及していないが、宇宙根源をスピリットとして言い表すという伝統をよく理解してほしい。そういう「無限遠」の視点をおいてすべてのことを考え直すことを、スピリチュアルな視点だというのである。無限の彼方があることを意識し、かしこから注がれてくるものを感じ、受け止め、生のなかに「永遠」を迎え入れることである。
そしてもう一つの意味は、スピリットとは、この宇宙根源から発せられ、万物を生成させる生命エネルギーである、ということだ。私がここに生を与えられているのも、その生命エネルギーによるものだ。つまりスピリットとは、ここでは、私という存在(私の魂)を含め、すべての存在物をそこに「ある」という状態へもたらす原理である。そのような「生命」の原理を真っ向から問うということが、文明というものの中核にあったことなのだ。
したがって、スピリチュアル哲学というのは、宇宙根源について思索し、そこに、あらゆる存在の生成する根拠を求めようとする思考のようなものを意味している。そのような問いを考え、その問いの深奥に入りこもうとする探求が哲学である、という考えがそこにある。
今回は、このくらいにするが、私の言うスピリチュアル哲学の考え方について、また語っていきたい。