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佐藤優の『獄中記』

佐藤優の『獄中記』という本を借りてきた。これは彼が東京拘置所で読んだ本の話や手紙などを中心にまとめられている。彼が拘置所でどういう勉強をしてどう何を考えたのかは興味がある。ところが・・かなり古風なのだ、その読んだ本のラインナップというのが。自分でも「読書傾向は団塊の世代に似ている」ということを言っているが・・ ハーバーマス、廣松渉、柄谷行人、宇野弘蔵とは・・神学ではブルンナーとモルトマンが多い。哲学ではヘーゲルを集中して読んでいる。しかしこれは、自分の好みというよりは、好みではないけれども読んでおかねばと思ったものが多いのだそうだ。そういう禁欲主義は私の中にはないので、彼の性格が出ている。それにしてもだいたい私の大学院時代くらいによく読まれていた本である(宇野弘蔵はそのころも読む人は少なかったが)。それと唯識に興味を持って何冊も読んでいる。これは私もほとんど読んでいる定評ある解説書だった。(廣松渉は私の修士論文の審査員の一人だったが、その頃すでに病気で休んでおり、読んだ上でコメントを送ってきた。ぜんぜん専門が違うのでかなり無責任というかどうでもいいことを述べていたコメントではあったが、それでも全部を読んだことは確からしく、「面白かった」とは言ってあった)

で、こういう彼の頭の中がどうなっているのかは、断片的な記述なので、どうもよくわからなかった。裁判や外交、政治の話も多いので、混沌としている。あちこち拾い読みしているとそれなりに面白いが、彼の思想として全体を知るには、別の本を見なければならないようだ。

あと、東京拘置所の食事はそうとうにおいしいのだそうで、毎回メニューが記録されている。この食事は、すでに判決を受けている受刑者(拘置者ではなく)が作るのだそうだ。

それからドイツ語とかラテン語など語学も勉強している。数学の教科書も持ちこんでいるがこれは本文にあまり記述がない。その教科書というのがわれらが母校でも使っていた啓林館版だというのもおもしろいが・・(うちの高校は数学に力を入れていた)。

それにしても、ルサンチマンに感情のエネルギーをとられることなく、自分の置かれた状況で最善のことを冷静に実行していく姿はやはり印象的で、こういう強さというのは昔からあったのかな、という感想がある。あるいは(自分でも少し書いているが)、イエスは不当裁判により断罪された政治犯であり死刑囚であったわけだから、こういうことが起こってもそれは彼の価値観を揺るがすことではなく、むしろ「貴重な経験」ととらえる余裕を生み出しているのかもしれない。

一人の人間の生として、ひじょうに興味を覚えるのものがある。

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